衣類を食べる虫の侵入経路として、窓や洗濯物を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、意外と見落とされがちなのが、私たち人間自身が「運び屋」になっている可能性です。外出先から帰宅した際、あなたの衣服や髪の毛、カバンに小さな虫が付着し、そのまま家の中に持ち込んでしまっているかもしれません。例えば、公園の草むらを歩いたり、庭でガーデニング作業をしたりした際に、植物にいたヒメカツオブシムシの成虫が衣服にくっついてくることがあります。彼らは非常に小さいため、付着していても気づくことはほとんどありません。また、ペットの散歩中に、犬や猫の毛に虫が付着し、そのまま家に入ってくるケースも考えられます。友人の家や職場、あるいは公共の交通機関など、人が集まる場所で、他の人の衣服から移ってくる可能性もゼロではないのです。一度家の中に持ち込まれた成虫は、やがて安全な産卵場所を探して飛び立ちます。そして、開けっ放しになっていたクローゼットや、ソファに脱ぎ捨てられたセーターなどを見つけ、そこに卵を産み付けるのです。この侵入経路は、日常生活の中に溶け込んでいるため、完全に防ぐのは難しいかもしれません。しかし、リスクを減らすための対策は可能です。外出から帰宅した際には、玄関に入る前に衣服の表面を軽く手で払う習慣をつけましょう。特に、ウール製のコートやジャケットは虫が付きやすいため、念入りに行うと良いでしょう。上着はすぐにクローゼットにしまわず、一度玄関や風通しの良い場所に掛けておくのも一つの手です。自分自身が侵入経路になりうるという意識を持つこと。それが、見えない敵から大切な衣類を守るための新たな視点となるはずです。